詩編130編《深淵から希望へ》深い淵の底から、主よ、あなたを呼びます。1節 詩篇130 篇は詩篇の中でも特に有名な詩篇である。M・ルッター の語った『パウロの詩篇』は、32、51、130、143 篇。 教会の歴史の中 で愛された7つの悔いあらための詩篇は更に6、38、102篇を加える。 『われ、深き淵より、汝を呼べり。』と言う印象的な聖句はバッハ の音楽をはじめ多くの芸術の主題として選ばれた。また、多くの苦 しみや病の中にある人々にかぎりない勇気を与えつづけた。 構造は 深淵よりの祈り(1-4)、 待望(5-6)、豊かなあがない(7-8) 【メッセージのポイント】 1)1 【都に上る歌。】 深い淵の底から、主よ、あなたを呼びます。 2 主よ、この声を聞き取ってください。 嘆き祈るわたしの声に耳を傾けてください。 3 主よ、あなたが罪をすべて心に留められるなら 主よ、誰が耐ええましょう。 ⇒自分自身の罪の深みから 「われ、深き淵より、汝を呼べり」。深い淵とは、(よみ)の世 界のこと。関根正雄氏によると、陰府の世界とは、古代の人達の考 えた、神から遠い、死者の世界のこと。そこは神の光の届かない、 神との交わりのとだえたところ。詩人はそこから神を呼ぶ。神を呼 べないような絶望のドン底から祈っているのである。「あなたが諸 々の不義に目を留められたなら一体誰が立ちえましょうか?」ここ であきらかになることは、詩人にとって深淵は、罪の問題であった 2)4 しかし、赦しはあなたのもとにあり 人はあなたを畏れ敬うのです。 5 わたしは主に望みをおき わたしの魂は望みをおき 御言葉を待ち望みます。 ⇒御言葉によって望みを抱け。 「わたしは主を待ちのぞみます。その御言葉によって望みを抱き ます。」(5 節口語訳) 詩人にとって、絶望の世界での唯一の希望は、神 の言葉、聖書の約束であった。特に罪からの救いの約束であった。 聖書は素晴らしい約束で満ちている。 救い(使徒16:31) 行づまり(1コリ10:23) 知恵(ヤコ1:5) 生活の不安(マタ5:66) 悩みの日( 詩50:11) 心配(ピリ4:5、6) 死(ヨハネ16:1-3) 等々。 聖書は恵みと約束の書。 3)6 わたしの魂は主を待ち望みます 見張りが朝を待つにもまして 見張りが朝を待つにもまして。 7 イスラエルよ、主を待ち望め。 慈しみは主のもとに 豊かな贖いも主のもとに。 8 主は、イスラエルを すべての罪から贖ってくださる。 ⇒神の愛と豊かなあがない。 神様の深い愛に依りたのむ者はさいわい。また主イエスの十字架のあがないを知る者は幸いである。いまや、弱い、罪深い私共も救いの中に入れて下さる救いの業は、成就しているのだから。 1970年6 月17日星野富弘さんは、 高崎市の倉賀野中学校の体育教師をしていたが、クラブ活動で模範演技をしているときに失敗して首の骨を折った。そして、首から下は、全くマヒしてしまった。その絶望の底で彼は、クリスチャンとなった。しかし、彼は今、口に絵筆をくわえて絵を描き詩をつづる。彼の本の題名、『愛 深き淵より』。 |